先端材料システム学講座│佐賀大学理工学部機械システム工学科

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研究内容

水素脆化機構の解明に向けたスケール横断的研究(武富)

地球温暖化や石油資源の枯渇,さらには電力供給問題に関連して,新エネルギー技術の開発が急がれています.その中で水素を利用した燃料電池システムが注目され,水素エネルギー社会の実現が期待されています.しかしながら,燃料である水素を高いエネルギー状態で取り扱う必要が生じるために,容器に用いる構造部材,特に鉄鋼材料に代表される金属材料の強度信頼性の確保が最も重要な課題の一つになっています.水素によって材料強度が劣化する水素脆化の研究は,その重要性から継続的に行われてきましたが,その全体像は未だ明らかにされていません.脆化機構の解明は耐水素脆性向上指針獲得にも重要であり,近年さらに緊急度が増している課題です.
本研究室では原子レベルシミュレーションを用いて,き裂先端から射出される転位*の運動挙動を解析しています.また,多数の転位群の挙動を調べるために転位動力学法を用いたメゾスケールの解析も実施しています.さらには解析のみでなく実験を援用することで,水素脆化の全体像を高精度に予測できるモデルの構築を目標に研究を進めています.

*転位:結晶中に含まれる線状の格子欠陥であり,外力によってすべり運動する.金属における塑性変形を担っている.




Fig. 1 モードIIき裂まわりの水素トラップエネルギー分布



Fig. 2 転位の運動に要するエネルギー障壁に及ぼす水素の影響



Fig. 3 転位動力学法によるき裂近傍での転位の運動挙動変化



Fig. 4 水素脆化による破面形態の変化


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